膝屈曲できるが階段昇降が難しい症例

「怖いんです」と言われた、その次

患者さんが階段を降りながら、「ここが怖いんですよね」と言う。手すりを握って、一段ずつ、足で段を探るように降りていく。

このとき、痛みの強さを聞きますよね。そして、膝の可動域を測る。ここまでは自然な流れです。

ただ、痛みが同じくらいの二人でも、片方はすっと降りて、片方は一段ずつになる。この差は痛みでは説明できないんですよ。

運動恐怖が強い人ほど、下降時の速度も最大膝屈曲も小さくなることが報告されています。つまり怖さは、主観的な訴えであると同時に、動作として観察できる現象でもあるわけです。

だから、怖さを主観として脇に置かないでください。支持脚が重心をどの軌道で、どの速度で下ろしているか。ここへ翻訳して見にいきます。

階段下降は、二つの局面でできています

まず前提を一つ置きます。

階段を降りる動作は、一つの連続した動きに見えて、中身は二つです。

上段に残った支持脚で身体を下げる局面。そして、次段に接地した脚で重心速度を受け止める局面。この二つが連続しています。

膝屈曲制限を見るとき、この分け方をしておくと読みが変わります。どちらの局面で動きが止まっているのか。止まった分の仕事が、どこへ移っているのか。

下げる局面で止まっているなら、支持脚の膝と骨盤を見ます。受け止める局面で止まっているなら、接地脚側の問題です。同じ「階段が怖い」でも、見る場所が変わるんですね。

この二つは、怖さの出方も違います。下げる局面で止まる人は、降り始めの一歩で時間がかかります。上段で固まったまま、次の足がなかなか出ない。受け止める局面で止まる人は、接地した瞬間にドスンと落ちるか、逆に接地を怖がって足先だけで触れる。

患者さんの訴えはどちらも「怖い」の一言ですが、動作として見れば別物です。どちらの局面かを決めてから評価に入ると、無駄な検査が減ります。

下降の余裕は、膝の角度だけでは決まりません

ここが今日の中心です。

下降できるかどうかは、膝が何度曲がるかだけでは決まりません。三つの要素が重なって、初めて余裕が生まれます。

一つ目は膝屈曲です。必要な可動域があること、そして遠心性の制動が使えること。角度があっても、ブレーキとして使えなければ意味がありません。

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