今回のテーマは「硬さ=ストレッチではない(過緊張と拘縮の違い)ー股関節の実際の臨床を想定してー」になります。
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今回は「過緊張と拘縮の違いを股関節の実際の臨床を想定」についてです。
股関節の硬さ自体は、さまざまな原因によって引き起こされます。不適切な姿勢や運動不足、過度なトレーニングなどが原因で、柔軟性が低下し、痛みや運動制限を引き起こすことがあります。股関節の硬さを改善することで、日常生活の質が向上し、運動性能の向上が期待できます。いきなり高難易度の運動療法から始めると、患者さんが挫折しやすいため、基本的なストレッチから始めて徐々に難易度を上げていくことが重要です。運動療法で股関節の硬さを改善すると、バリエーションが増えて、段階的なエクササイズを展開することができます。
ということでストレッチが第一選択になるケースが非常に多いかと思います。ストレッチの選択が悪いというわけではなく、ストレッチ以外の方法を知っておく必要がありますし、今回のテーマである過緊張と拘縮の違いの理解するとストレッチ以外の選択肢が必要になってきます。
硬さに対する治療展開がストレッチだけになってしまうといくつかの問題点が生じます。
1. 根本原因の見落とし
ストレッチは筋肉の柔軟性を高めるのに役立ちますが、硬さの根本的な原因に対処するものではありません。硬さや拘縮の背景には、不適切な姿勢、過度な使用、筋肉の不均衡、ストレス、神経系の問題など、さまざまな要因が関与している場合があります。これらの根本原因に対処しない限り、治療は一時的な解決に過ぎず、症状は繰り返し現れる可能性があります。疼痛や視線の変化がなかなか生じにくいです。
2. 一方的なアプローチ
ストレッチだけに依存するということは、治療アプローチが一方的になることを意味します。筋肉の硬さや拘縮には、ストレッチングだけでなく、筋力トレーニング、マッサージ、熱療法、電気刺激療法など、多角的なアプローチが効果的です。
3. 潜在的な過剰治療
ストレッチを過度に行うことは、筋肉や腱に対する過剰治療につながることがあります。適切な強度や頻度を超えたストレッチは、筋肉の微細な損傷や、逆に硬さを増す原因となることがあります。また元々関節弛緩性がある患者や不安定性がある患者へのストレッチが逆効果になる場合もあります。
4. 個々の差の無視
患者によって筋肉の状態や硬さの原因は異なります。ストレッチだけを行うアプローチは、個々の身体の違いや特定のニーズを無視することになりがちです。治療展開は、個人の健康状態、活動レベル、生活習慣などに基づいてカスタマイズされるべきです。
5. 総合的なリハビリテーションの欠如
筋肉の硬さや拘縮は、身体の機能に広範な影響を与えることがあります。したがって、治療は身体全体の機能を考慮に入れた総合的なリハビリテーションが求められます。運動療法、姿勢修正、機能的トレーニングなど、全体的なアプローチが必要です。
ということで硬さの理解を深めていきましょう!
では始めていきます!
硬さ≠ストレッチではない
ROM制限があり、硬さに対する治療展開としてストレッチングを展開することがデフォルト化されているケースがあります。
股関節伸展可動域制限があれば大腿直筋や腸腰筋のストレッチを、股関節屈曲可動域制限があれば殿筋のストレッチを、というように考えてしまいます。
ここで押さえておきたいポイントは硬さに対する治療展開はストレッチだけではないことです。また硬さに対する理解をもう少し深めておく必要があります。
可動域制限の要因
可動域制限の要因には大きく3つがあり、分類されています。
過緊張は、筋肉が通常以上に緊張した状態を指し、筋肉の硬さや緊張が高まることを意味します。これは、ストレス、筋スパズム、疼痛、不適切な姿勢や動作、または神経系の異常などによって引き起こされることがあります。
拘縮は、関節可動域が制限される状態を指します。これは関節周囲の筋肉、腱、靭帯、関節包などの組織が硬くなることにより生じます。拘縮は長期間にわたって関節が適切に動かされないことで起こることが多く、手術後の長期間の安静や神経損傷、筋骨格系の疾患などが原因で生じることがあります。拘縮が進行すると、関節の機能障害や痛み、姿勢の異常につながることがあります。
強直は関節構成体の器質的変化であるため、可動域制限がなかなか改善しにくくなります。
拘縮のメカニズム
拘縮のメカニズムとしては、主に不動や関節固定が始まりになります。
骨折の治療におけるギプス固定や疼痛軽減のための固定により、関節や筋肉を動かすことが一定期間できなくなります。
筋長の短縮と伸張性低下、コラーゲン線維の増加などによって拘縮が生じてしまいます。
拘縮の種類
拘縮の種類は、主に皮膚・筋肉・関節の3つがあります。
手術における皮膚を切開したときの術創部が最もイメージしやすいです。表皮・真皮・皮下組織から構成される皮膚組織ですが、コラーゲン線維が増加して線維化の発生や進行してしまいます。
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