10回3セットって見直してる?

はじめに

カルテに「スクワット 10回3セット」と書いた手が、一瞬止まったことはないですかね。書けるんですよ、いくらでも。でも患者さんに「これ、何のためにやるんですか」と聞かれたときに、すっと出てくる言葉があるかどうか。ここが分かれ目なんです。

先に結論を言っておくと、10回3セットは処方ではなく初期値です。扱いやすいし、外れにくいし、誰に出しても大事故にはならない。だから残っている数字なんですね。ただ、扱いやすいことと、根拠があることは別の話です。

同じスクワットでも、高い力を出させたいのか、長く反復させたいのか、動作パターンを覚えさせたいのか、症状の許容範囲を探りたいのか。狙いが違えば、身体に入る刺激はまったく別物になります。にもかかわらず、紙の上の数字は全部「10回3セット」で同じ顔をしている。この記事は、その同じ顔をした処方を、目的別に中身から書き分けていく話です。

出発点は回数表じゃなくて「何を変えたいか」

負荷設定でまず決めるのは、回数ではありません。目的です。しかも、ここは四つに絞れます。

筋力なのか、持久力なのか、運動学習なのか、症状反応の確認なのか。

筋力を狙うなら、追う指標は「十分に高い努力度が出せているか」。持久力なら「どこまで反復に耐えられるか」。運動学習なら「成功と誤差がちょうどよく混ざっているか」。症状反応なら「当日と翌日でどう動いたか」。

見ている変数が、そもそも違うんですよ。同じスクワットを見ていても、筋力狙いのセラピストは最後の1回の顔を見ていて、運動学習狙いのセラピストは膝の軌道を見ている。それくらい違います。

一つの運動に目的が複数ぶら下がることは、もちろんあります。ただ、主目的は一つに決めてください。二つ追いかけた瞬間に、負荷を上げるべきか反復を増やすべきかの判断が止まります。決められないから、無難な10回3セットに戻る。あれはそういう構造なんですね。

負荷レバーは「重さ」だけじゃない

もう一つ、負荷設定が動かなくなる理由があります。負荷イコール重さだと思っていると、操作できるつまみが一本しかなくなるんです。

実際には、こちらが動かせるレバーは少なくとも八つあります。外部負荷、努力度、休息時間、反復量、速度、可動域、支持条件、そして手がかり(キューや目標線)。

このうちどれを優先して動かすかが、目的ごとに変わります。筋力なら外部負荷と努力度と休息。持久力なら反復量と持続時間と休息の短さ。運動学習なら手がかりと成功率。症状反応なら可動域と速度。

つまり、回数を10回のまま据え置いても、レバーを一本変えるだけで難易度と刺激は別物にできる、という話なんですよ。数字を変えないと処方を変えた気がしない、というのは思い込みです。

同じ10回でも、中身は全部違う

具体的に並べてみます。全部スクワット10回です。

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