
「締められます」で評価を終えていませんか
座位になった患者さんを見ると、両方のつま先が外を向いている。呼吸をしてもらうと、下位胸郭の広がりが小さい。そこで骨盤底を軽く収縮してもらうと、収縮そのものはできる。こういう場面、ありますよね。
このとき「収縮できているから、骨盤底筋は問題なさそう」と判断したくなるかもしれません。でも、ここで見たいのは最大収縮だけではないんですよ。軽く収縮したあとに完全に戻れるか。静かな吸気に合わせて、骨盤底がわずかに下降できるか。過緊張を考えるなら、この二つが評価に入ってきます。

骨盤底筋は、強ければよいわけではありません。収縮できることと、必要なときに弛緩できることは分けて見たいんですね。むしろ収縮ができていても、戻りが乏しければ過緊張を見落とします。
一方で、つま先が外を向いているからといって、それだけで異常と決める話でもありません。股関節外旋位は診断名ではなく、評価を始めるための入口です。姿勢を見つけた瞬間に結論を出すのではなく、そこから呼吸と弛緩の反応を確かめていく。今回は、その見方を一緒に整理していきましょう。
外旋位を見つけても、異常とは決めない
患者さんが外旋位で座っていたとします。見るのは、足部と膝の向きだけではありません。そのまま呼吸してもらったときに下位胸郭がどう広がるか、腹部がどう動くかを確認します。さらに、痛みのない範囲で大腿と足部を中間位へ近づけ、もう一度呼吸してもらうんですね。

外旋位では呼吸が浅く、中間位へ近づけると下位胸郭が広がる。ここまで反応がそろって初めて、「外旋で固める戦略が関係しているかもしれない」という評価仮説が出てきます。つまり、外旋位という見た目より、回旋を少し変えたときの呼吸反応のほうが臨床では大事なんですよ。
反対に、中間位へ近づけても呼吸が変わらないなら、外旋位だけを追う理由は弱くなります。外旋優位を見つけることが評価ではありません。外旋位、浅い下位胸郭呼吸、骨盤底の戻りにくさがどう重なるかを確かめることが評価なんですね。
静止画の姿勢は、答えではなく検査を始める合図です。外を向いた足を見てすぐに修正するのではなく、呼吸させる、回旋を少し変える、もう一度呼吸させる。この前後比較まで行って、外旋位を入口として使えるようになります。
骨盤底を局所だけで考えない
骨盤底は、単独で浮いている筋ではありません。上には横隔膜があり、側方には骨盤壁があり、股関節の近くには内閉鎖筋や梨状筋を含む深層外旋筋群があります。そこには腹腔内圧も関わります。骨盤底筋群、横隔膜、深層外旋筋群、腹腔内圧、股関節回旋を別々の項目として並べるだけでは、患者さんの反応がつながりにくいんですね。
研究では、骨盤底に呼吸性活動があり、横隔膜と骨盤底が呼吸中に連動することが示されています。また、骨盤底収縮と梨状筋活動には機能的な関係があります。ですから、骨盤底の所見を見たときに呼吸と股関節運動を同じ線上で考えることには意味があります。
ただし、この関係があるからといって、「外旋筋が硬いから骨盤底が過緊張になった」と原因を決めることはできません。つながりを知ることと、因果を断定することは別なんですよ。骨盤底を局所だけで評価しない一方で、周囲との関係だけで原因を決めない。この両方を守ります。
局所所見と動作中の反応を結ぶ役割をするのが、呼吸と股関節回旋です。外旋位のまま吸気を行ったときと、中間位へ近づけて吸気を行ったときで、下位胸郭、腹部、骨盤底の反応がどう変わるかを見る。解剖学的な接点は、断定の材料ではなく再テストの設計に使うんですね。
収縮できても、過緊張は否定できない

過緊張を考えるときは、三つの条件を分けて見ます。一つ目は筋緊張です。収縮できるかだけでなく、収縮後に完全に戻れるか、安静時にも保持が残っていないかを確認します。
二つ目は回旋姿勢です。座位で大腿と足部が外旋位に固定されているかを見ます。外旋位にいること自体ではなく、中間位へ近づけられるか、その前後で反応が変わるかまでが確認点ですね。
三つ目は呼吸反応です。吸気で下位胸郭と腹部が広がるか、骨盤底が呼吸に参加して下降方向へ動けるかを見ます。この三つは、まとめて「硬い」で済ませないほうがいいんですよ。筋緊張が残るのか、外旋固定があるのか、呼吸性の動きが乏しいのかを分けると、何を再評価するかがはっきりします。
ここで大事なのは、最大収縮が出たことを終了条件にしないことです。しっかり締められる患者さんでも、締めたあとに戻れないことがあります。収縮できるという陽性の情報が、弛緩できるという保証にはならないんですね。
評価では「一度、軽く収縮してください。そのあと、力を抜き切ってください」と分けて確認します。さらに静かな吸気を重ね、下降方向の動きが出るかを見る。この順番なら、収縮力と弛緩余白を混同せずに捉えられます。
外旋は原因ではなく、変化を試す条件になる
外旋位で座位を固定し、深層外旋筋群の活動が続いていると疑われる。そこに浅い呼吸と骨盤底の乏しい弛緩が重なっている。こうした人では、外旋で固める戦略が骨盤底の弛緩余白を狭めている可能性を考えます。