
足関節捻挫のリハビリ展開に必要なのは、どのようにリハビリを展開していくのかです。
バランス訓練や足関節バンドエクササイズは運動療法の中の一つで、何を展開するにも目的と根拠が必要になってきます。
足関節内反捻挫では、前距腓靭帯などの外側組織が伸張されて損傷するだけでなく、内側組織には圧縮ストレスがかかっています。 また、靭帯だけでなく、腓骨筋などの筋力低下、固有受容感覚(関節の位置や動きを感じる感覚)の低下、神経筋コントロール(筋肉を協調して動かす能力)の異常なども引き起こされます。 これらのどの機能がどの程度障害されているのかを評価し、アプローチの優先順位を決めることが第一歩となります。
時期に応じた段階的なアプローチ
リハビリテーションは、受傷直後の急性期から、回復期、スポーツ復帰期へと段階的に進めていく必要があります。
そしてどのようなタイミングで受傷した選手を担当するのはか不明です。
なおさらどの時期に担当したとしても適切なリハビリを行なっていくことが必要になってくるけど、意外とスポーツ復帰が苦手であったり、急性期が苦手な状況もあります。
病院勤務でなかなか現場対応を経験していなければ、どのような受傷をしてどのような評価を行なっているのかは把握していない部分が多いはずです。
一般的には以下のように考えていきます↓
・急性期(受傷〜2週間程度): 疼痛と腫脹の管理が最優先です。 この時期は、関節に負荷をかけない等尺性収縮や、足部内在筋のエクササイズなど、低負荷の運動から開始します。
・回復期(受傷3〜10週程度): 徐々に負荷を上げていきます。可動域訓練、筋力強化、バランストレーニングなどを組み合わせて、足関節の機能を回復させていきます。
・復帰準備期(受傷11週以降): よりスポーツ動作に近い、高負荷なトレーニングへと移行します。ランニングやジャンプ、方向転換など、競技特性を考慮したエクササイズを取り入れます。
具体的な運動プログラムの考え方
最終的なゴール目標を設定します。受傷した患者がスポーツ復帰を希望しているのか、それとも体育レベルのスポーツ参加なのかで、どのような展開を踏んでいくのかが変わってきます。
スポーツ復帰を希望するのであれば
なぜ受傷してしまったのか?
動作エラーはあるのか?
筋機能の低下はあるのか?
可動域の問題はあるのか?
他にも多くの視点から足関節捻挫を見ないといけないです。
スポーツ復帰の判断には、「PAASS」というフレームワーク(疼痛、足関節の障害、選手本人の認識、感覚運動制御、スポーツパフォーマンスを評価するもの)などを参考に、客観的な指標に基づいて慎重に行うことが再発防止の鍵となります。

「PAASS」というフレームワークには多くの項目が入っています。

だからこそこれらの項目をクリアにしつつ、スポーツ復帰を目指せるリハビリを展開していきましょう!
症例ケース
・16歳バスケットボール選手の急性捻挫
・男性、高校バスケットボール部所属。
・発生状況:試合中、スピンターン時に右足が相手選手の足上に乗り、足関節が強く内反→「グキッ」と音がして転倒。
現場対応
まずはオタワアンクルルールで骨折しているかどうか、プレーが続行できるのかを判断します。
-
腫脹:外果周囲+圧痛。
-
痛み:歩行時に体重荷重で疼痛スケール7/10。非荷重では4/10。
-
歩行可能かどうか。
ポイントとして受傷直後は腫脹が生じていなくて、圧痛や骨への叩打痛で評価をしていきます。まだ直後だから腫脹は起きていないけど、徐々に腫れてくることも伝えておくといいです。
テーピングは応急処置の範囲であり、テーピングを巻いて疼痛が減り、プレーを再開できるケースもあります。ヒールロックやフィギアエイトなどの内反方向の固定を行い、再受傷を防ぐことが重要ですね。
最後はアイシングの実施です。
最近の報告ではPEACE&LOVEといって、今までの急性期対応の認識であるRICE処置が変わってきています。
RICE→PEACE&LOVE
現状アイシングの文字が消えていて、最優先での処置ではなくなりました。最も重要になってくるのは固定と腫脹を防ぐための圧迫であると考えています。
ケースを通して
他にも多くの要因が絡んできて現場での対応があります。まずは骨折などの大怪我のリスクを評価で見ていき、今後の経過のために何をすればいいのかを学んでいきましょう!