第1章 無料公開
腰痛と体幹の運動制御
効かない理由から、評価、エクササイズの選択までを4章にまとめました。第1章は登録も申込も不要で、このまま読めます。
- 第1章効かない理由
- 第2章何が起きているか
- 第3章評価から運動療法へ
- 第4章選択と段階づけ
- 全4章
- 効かない理由・病態・評価・選択
- 137点
- 図解スライド
- 23本
- 実演・解説動画
- 約4.4万字
- 本文の総量
腰痛と体幹の運動制御 第1章
体幹エクササイズが効かない理由
体幹を鍛えているのに腰痛が変わらない。その状態で何を疑うかを整理します。
体幹の運動療法が効かない場合
体幹の運動療法が効かないケースは、臨床では決して珍しくありません。
むしろ「体幹を鍛えれば良くなるはず」という期待が強い分、効かなかったときに迷子になりやすい領域でもあります。
その中でも、運動療法によって悪化したケースは意外と問題視されやすいです。
もちろん「疼痛が強くなった」「エラー動作が出現した」という変化は望ましくありません。

ただ、自分としては悪化はどこかで 儲けもん”だとも思っています。
なぜなら悪化というのは、「効かなかった」よりもさらに一歩進んで、この方向は違うという答えが出た状態だからです。
たとえるなら、
暗い部屋でスイッチを探しているときに、ボタンを押しても何も起こらないより、ブレーカーが落ちる方が原因の方向性は掴みやすい。
もちろん落ちたら困るけれど、「今のルートは違う」と明確になります。
つまり、悪化は「失敗」ではなく、病態と負荷の関係が露出した“検査結果として捉えると、次の一手が作りやすくなります。
悪化は病態理解の不足を埋めるヒントになる

悪化が起きたときに大事なのは、
「運動療法が合わなかった」で終わらせず、
この運動療法が良くないんだな
じゃあ、なぜ良くないのかな?
と、理由を分解することです。
ここを掘れると、病態の理解不足が自然と補われていきます。
逆に言えば、効かなかった運動療法の理由が言語化できないと、次も同じ失敗が起きやすい。
だからこそ、悪化は臨床推論として価値があります。
「痛みが出た」という現象は、“負荷の掛かり方”の答え合わせになってくれるからです。
例:体幹運動での反応から“方向性”を読む
たとえば以下のような反応が出たとします。
-
デッドバグをやったら痛かった
-
長座位でやっても痛かった
-
バードドッグをやってもそこまで変わらない
こういった反応は、「体幹運動がダメ」ではなく、
どの条件で負荷が破綻するかの地図をくれています。
ここで大事なのは、
痛み=その運動が悪いという単純な判断ではなく、
-
どんな姿勢で
-
どんな力の方向で
-
どんなタイミングで
-
どの組織に負荷が集中したのか?
という視点に戻すことです。
つまり、各組織に対する運動療法を見ていくと、
「方向性」が確認できるのではないかと思います。
悪化した場合・効かない場合の対処法
悪化した場合や運動療法が効かない場合は、まず一つ前に戻ってください。
ここが一番大事です。
反応が悪いときに、焦って難易度を上げたり、種目数を増やしたりすると、
「何が原因だったか」が分からなくなっていきます。
だからまずは、負荷を減らして条件を整える。
これは逃げではなく、推論の精度を上げるための作業です。
結果が悪かったら、運動療法の“選択”を変えてみる
結果が悪かった場合は、運動療法の選択を変えてみてください。
・屈曲だけ強調してみて痛みが減るのかどうか
・伸展だけやってみて痛みが減るのかどうか
ここでやっているのは、
単なるメニュー変更ではなく、症状が嫌う方向・許容する方向の確認です。
例えば、同じ「体幹を安定させたい」でも、
-
屈曲方向で楽になるのか
-
伸展方向で楽になるのか
この差が見えた瞬間に、
「どこにストレスが乗っているのか」の解像度が一気に上がります。
一つ前の段階に戻すのは戦略として強い
運動療法の選択として、例えば多裂筋という運動療法の中でバードドッグをやるのではなく、
座位でやればどうなのかという形で、一つ前の段階に戻ってもらえると良いと思います。
ここで重要なのは、
-
狙い(ターゲット)は変えない
-
条件(難易度・姿勢・負荷)だけ変える
という発想です。
つまり、
「同じ目的のまま、失敗しない入口に戻る」ということ。
これはリハビリの展開としてかなり強くて、
患者さんの安心感を保ったまま、次の検証ができます。
バリエーションは修正能力そのもの
バリエーションを身につけておくことで、即時的な反応は若干得やすくなってきます。
そして、この即時反応が得られると何が良いかというと、
-
仮説の正誤が分かる
-
介入の方向性が確定する
-
患者さんの納得感が上がる
こういう臨床的メリットが積み上がります。
だから、そういった視点を持って運動療法を展開してもらうと、
修正も効きやすいかなと思います。
悪化した時の対処は、実はシンプル
悪化した時の対処は意外と簡単です。
今やっている運動療法をやらない方向性にすれば解決できるからです。
ここでのポイントは、
悪化=アウト
ではなく
悪化=「この方向は違う」という確定情報
と捉えることです。
だから「なんで疼痛が出たのかな」という視点を持つと、
病態を認識しやすいと思います。
まとめ
効かないのは情報が少ない。悪化は情報が増える。
悪化は失敗ではなく、“方向性が見えた”という検査結果。
だからやるべきは前に進むことではなく、一つ前に戻って条件を整えること。
体幹Exが効かない理由は全てを筋トレにしているから
運動療法=全部筋トレ
腰痛患者に体幹エクササイズをすること自体は間違っているわけではないけど、「運動療法=全部筋トレ」になっているというのが良くない思考になっています。
筋トレをするという目的と手段が入れ替わるのが問題であって、運動療法は本来、筋肥大だけでなくコントロールや学習の転移を含んでいるはずです。

なぜ筋トレ化が起きるのか
運動器疾患における視点としては関節可動域と筋力がメインになってしまっていて、評価自体の問題点としても筋力や可動域は視覚的にも数値として確認することができますし
患者自身も体験できるものであるからです。
リハビリをするにあたってリハビリの展開が測れるもの(回数・秒数・負荷)に寄りやすいのは当たり前であって、数値化されにくい学習の転移やコントロールはフォーカスされにくいです。
でも臨床で欲しいのは「課題中に必要量で出せる/力を抜ける/転移する」みたいなところなはずです。
MMT3レベルを常にMMTレベル5で出力させることが正解ではないはずです。
筋トレ化が生むデメリット
筋力トレーニングの自体は筋機能が改善するもののいくつかのデメリットもおきやすいです。
固める学習(息止め・肋骨挙上・過緊張)が強化される
腰痛患者の中には体幹をあえて固める戦略をとっていて、腰椎を動かないようにすることで疼痛を生じさせないようにしています。となってくるとプランクような共同収縮を行うエクササイズがいいかどうかはわかるはずです。
かえって固める戦略を強めてしまい、重要なシーンで筋緊張がうまくコントロールできなくなってしまいます。
弱い=危険=固める
体幹筋の弱さがあることで危険を感じて、体を固める戦略をとってアウターマッスルなどの過剰収縮が起きます。その状態で体幹エクササイズをしてもアウターマッスルの過剰収縮を促しやすくなるだけです。
アウターマッスルが収縮してしまうかつモーターコントロールが修正できないようなエクササイズは不向きになりやすいです。
ADLに転移しない(Exの動きだけ上手くなる)
筋トレにフォーカスし続けると、ADLに転移できるわけではないから、必要な力だけでコントロールスキルを獲得できていないです。ADLで必要になるのは100ある力を15ないしは20くらいで出力するコントロールのスキルであって、筋トレで獲得した100の力を全力で発揮するのは間違いです。

運動療法の設計を見直す
筋力トレーニング自体はいいものであって効果的であるのは間違いないですが、あくまで大きな括りである運動療法の一部なはずです。
もし筋力トレーニングを行って疼痛が軽減しても運動制御自体は改善しているわけでもないし、日常生活に溶け込ませる必要があります。
今一度運動療法の設計を見直してみてください!
ドローインは体幹トレの正解なのか?
とりあえずドローイン現象

多くの腰痛患者に対して、初回から「仰向けでドローイン」「四つ這いでドローイン」がルーティン化されている場合を整形外科クリニックではよく確認できます。それくらいドローインが重要視されているということもあり得るが、問題はそこではないんです。
「とりあえずドローイン」ルーティンが、自分の臨床にも染みついていないのかということです。カルテの記載には「体幹安定化」や「ドローイン」という項目がテンプレのように並ぶ一方で、「その患者にとって、いま本当に必要な戦略か?」ということが重要です。
特に腰痛患者の論文や書籍を見てみると、運動療法の部分のドローインの効果であったり、腰痛患者の病態の部分に腹横筋の機能などが記載されています。
だからこそ「行うべき内容」「実施するべき運動療法エクササイズ」という認識が高まっている背景もありますし、クリニックで行っている先輩の治療を見ていて、そこから模倣している可能性もあります。
ドローインは正解っぽい体幹トレ
ドローインが広まっている、ここまで重要視されている理由は多く考えられます。自分自身もドローインを提供してきたからこその考えもありますし、思い当たる節もちらほらあります。

①インナーマッスルだから
腹横筋自体がインナーマッスルであり、インナーとアウターという筋機能分類の重要性を知り始めるためと、アウターが過剰に収縮しやすくてインナーが機能低下しやすい、深層筋を鍛えれば安定するということがあるからです。
ここの考え方自体が全く間違っているというわけではないです。あくまでここの理由に大きく引っ張られている可能性が高いということです。
②コア=インナーという図式の定着
コアスタビリティ文脈での普及してきていて、インナーマッスルの機能が重要視されてきてる点です。
ドローインが広まった背景は、分かりやすさと測りやすさが先に立った結果であって、ドローイン自体の効果やメリットだけが臨床に広がっている可能性があるということです。
「筋力トレ」ではなく「筋活動パターンの再教育」
ドローインの主目的は腹横筋の1RM向上ではなく、筋のオン・オフや協調の質を変えることであって、安定してほしい、固定してほしいタイミングでの腹横筋の収縮が必要になることです。
ドローインで腹横筋が活性化されて、常に腹横筋が働きやすい環境であることや腹横筋の収縮するタイミングの正常化かつ先行化というのが必要であって
常にドローインをする
ドローインさえすればいい
というのが間違っている戦略になってしまっています。
論文でも分節不安定をもつ腰痛患者では、短期的な痛みの軽減や並進運動の減少に優れた結果を示しています。
しかし、そのメッセージが臨床に届く過程で、「腰椎不安定=すべてドローインで修正する」「どんなタスクでもインナー優先」という形に過度に一般化されてしまった側面があるはずです。
まとめ
-
ドローインが体幹トレの正解として扱われてきた背景
-
ドローインが狙う本来の役割(筋活動パターンの再教育)
ドローインの注意点
こちらが動画コンテンツになります!