
体幹の運動療法が効かないケースは、臨床では決して珍しくありません。
むしろ「体幹を鍛えれば良くなるはず」という期待が強い分、効かなかったときに迷子になりやすい領域でもあります。
その中でも、運動療法によって悪化したケースは意外と問題視されやすいです。
もちろん「疼痛が強くなった」「エラー動作が出現した」という変化は望ましくありません。

ただ、自分としては悪化はどこかで 儲けもん”だとも思っています。
なぜなら悪化というのは、「効かなかった」よりもさらに一歩進んで、この方向は違うという答えが出た状態だからです。
たとえるなら、
暗い部屋でスイッチを探しているときに、ボタンを押しても何も起こらないより、ブレーカーが落ちる方が原因の方向性は掴みやすい。
もちろん落ちたら困るけれど、「今のルートは違う」と明確になります。
つまり、悪化は「失敗」ではなく、病態と負荷の関係が露出した“検査結果として捉えると、次の一手が作りやすくなります。
悪化は病態理解の不足を埋めるヒントになる

悪化が起きたときに大事なのは、
「運動療法が合わなかった」で終わらせず、
この運動療法が良くないんだな
じゃあ、なぜ良くないのかな?
と、理由を分解することです。
ここを掘れると、病態の理解不足が自然と補われていきます。
逆に言えば、効かなかった運動療法の理由が言語化できないと、次も同じ失敗が起きやすい。
だからこそ、悪化は臨床推論として価値があります。
「痛みが出た」という現象は、“負荷の掛かり方”の答え合わせになってくれるからです。
例:体幹運動での反応から“方向性”を読む
たとえば以下のような反応が出たとします。
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デッドバグをやったら痛かった
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長座位でやっても痛かった
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バードドッグをやってもそこまで変わらない
こういった反応は、「体幹運動がダメ」ではなく、
どの条件で負荷が破綻するかの地図をくれています。
ここで大事なのは、
痛み=その運動が悪いという単純な判断ではなく、
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どんな姿勢で
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どんな力の方向で
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どんなタイミングで
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どの組織に負荷が集中したのか?
という視点に戻すことです。
つまり、各組織に対する運動療法を見ていくと、
「方向性」が確認できるのではないかと思います。
悪化した場合・効かない場合の対処法
悪化した場合や運動療法が効かない場合は、まず一つ前に戻ってください。
ここが一番大事です。
反応が悪いときに、焦って難易度を上げたり、種目数を増やしたりすると、
「何が原因だったか」が分からなくなっていきます。
だからまずは、負荷を減らして条件を整える。
これは逃げではなく、推論の精度を上げるための作業です。
結果が悪かったら、運動療法の“選択”を変えてみる
結果が悪かった場合は、運動療法の選択を変えてみてください。
・屈曲だけ強調してみて痛みが減るのかどうか
・伸展だけやってみて痛みが減るのかどうか
ここでやっているのは、
単なるメニュー変更ではなく、症状が嫌う方向・許容する方向の確認です。
例えば、同じ「体幹を安定させたい」でも、
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屈曲方向で楽になるのか
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伸展方向で楽になるのか
この差が見えた瞬間に、
「どこにストレスが乗っているのか」の解像度が一気に上がります。
一つ前の段階に戻すのは戦略として強い
運動療法の選択として、例えば多裂筋という運動療法の中でバードドッグをやるのではなく、
座位でやればどうなのかという形で、一つ前の段階に戻ってもらえると良いと思います。
ここで重要なのは、
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狙い(ターゲット)は変えない
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条件(難易度・姿勢・負荷)だけ変える
という発想です。
つまり、
「同じ目的のまま、失敗しない入口に戻る」ということ。
これはリハビリの展開としてかなり強くて、
患者さんの安心感を保ったまま、次の検証ができます。
バリエーションは修正能力そのもの
バリエーションを身につけておくことで、即時的な反応は若干得やすくなってきます。
そして、この即時反応が得られると何が良いかというと、
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仮説の正誤が分かる
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介入の方向性が確定する
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患者さんの納得感が上がる
こういう臨床的メリットが積み上がります。
だから、そういった視点を持って運動療法を展開してもらうと、
修正も効きやすいかなと思います。
悪化した時の対処は、実はシンプル
悪化した時の対処は意外と簡単です。
今やっている運動療法をやらない方向性にすれば解決できるからです。
ここでのポイントは、
悪化=アウト
ではなく
悪化=「この方向は違う」という確定情報
と捉えることです。
だから「なんで疼痛が出たのかな」という視点を持つと、
病態を認識しやすいと思います。
まとめ
効かないのは情報が少ない。悪化は情報が増える。
悪化は失敗ではなく、“方向性が見えた”という検査結果。
だからやるべきは前に進むことではなく、一つ前に戻って条件を整えること。