今回のテーマは「アキレス腱障害の基本的な知識(0→1の理解)」になります。
こちらの記事を最後まで読むと

・アキレス腱の基本的な解剖と機能を把握できる
・周囲組織の理解も深まる
・アキレス腱障害の病態を理解でき、治療に応用することができる

今日は「アキレス腱」について共有していきます。

多くのアスリートやフィットネス愛好者が経験するアキレス腱障害ですが、アキレス腱は走ったり、跳んだり、立ち上がったりするときに中心的な役割を果たしています。

アキレス腱のその名前はギリシャ神話の英雄アキレスから取られています。私たちの身体の中で最も強靭でありながら、最も敏感な部分の一つです。過度なトレーニング、不適切な靴、または単に年齢とともに来る自然な摩耗など、様々な要因がアキレス腱の問題を引き起こすことがあります。このような障害は、痛みや動きの制限を引き起こすだけでなく、日常生活の質を低下させる可能性もあります。

なぜアキレス腱障害が起きてしまうのか?

アキレス腱障害とは言ってもアキレス腱以外の部分が痛みを生じさせている可能性もあります。その時にアキレス腱以外の周囲組織の理解はできていますか?

圧痛や評価をするときに解剖学の理解が乏しくて、「ここ何かわからない…」なんて経験はありませんか?

リハビリを進めていくときに"どのような状態であるのか"、なぜストレスを受けるのかを理解して運動療法や治療アプローチが展開できると、患者との信頼関係も構築しやすくなります。

まずはアキレス腱自体の理解を深めて、どのようなメカニカルストレスが生じているのかを理解しておきましょう。

そしてどのような身体機能では"アキレス腱障害になりやすいのか"、危険因子を把握しておくと治療アプローチの幅が広がり、予防的な考えも身につきます!

それでは本題に入っていきます!

では始めていきます!


アキレス腱

アキレス腱障害を学んでいく前にアキレス腱について復習していきましょう。意外と盲点になっていることもしばしば経験するため、ここで土台の知識を理解しましょう。

アキレス腱は腓腹筋とヒラメ筋の2つの筋肉から構成されている最大の腱であり、伸びにくく強靭な組織です。

付着部

アアキレス腱は踵骨に捻れて付着しますが、踵骨粗面を3つのパート(上部SF・中部MF・下部IF)に区分することができます。

SF:アキレス腱は付着せず踵骨後部滑液包の前壁を形成。
MF:アキレス腱の大部分が付着して内側はヒラメ筋、外側は腓腹筋外側頭。
IF:腓腹筋内側頭腱の一部が付着、足底まで展開  

ここで3つのパートを理解しておく理由としては、評価時の圧痛所見になります。

例として肩関節を思い浮かべてください。上腕骨をピンポイント(ワンフィンガーサイン)に押さえている場合に圧痛所見を評価します。踵骨粗面や大腿骨大転子と同様に上腕骨も3つのパートに区別でき、それぞれ解剖学的に異なる組織が付着しています。

圧痛所見の評価をする際は、組織がどこにあるのかをイメージして行う必要があり、これは”付着のタイプ”によって異なることがあります。

”アキレス腱は捻れて付着する”とされていて、また他の組織もあるためどこの組織に疼痛が生じているのかを判別しやすくするためにタイプ別に見ていきましょう。

踵骨粗面

アキレス腱は踵骨粗面に捻れて付着しますが、捻れの状態はタイプによって異なります。

付着のねじれ構造が多いタイプは

タイプⅠ > タイプⅡ  >タイプⅢ

タイプⅢは数%であり、理解の優先度は下がります。
タイプⅠとタイプⅡは割合は同程度であるため、覚えておきましょう。

上が踵骨後部滑液包
下は腓腹筋内側頭
内側はヒラメ筋

というように覚えておきましょう。頭の中にこの図が入っていると"圧痛所見"の評価時に活かしやすくなります。

またアキレス腱は加齢に伴う変化があり、高齢者で"アキレス腱障害"を担当する場合は注意が必要です。

・高齢になるにつれて近位に付着する
・付着部の範囲が狭くなる

上記のように報告されているため、圧痛所見とかは注意したほうがいいかもしれませんね。

血管・血流

アキレス腱の特徴としては、”血流供給が乏しい部位がある”ということです。これはACLなどの関節内靭帯、腱板に損傷があった際の考え方と同様であり”治癒が遅れる”この一点になります。

臨床的に疼痛がある部位は、アキレス腱付着部の踵骨内側部と外側部が多い印象になります。なぜその部位に疼痛が多いのかはアキレス腱実質に加わりやすいメカニカルストレスが関係していると思います。

血液供給が中央部よりも付着部の方が豊富であることを考えると組織損傷して生まれた疼痛は、血流の視点から考えると予後が良いことがわかります。

とは言ったものの、リハビリ開始してすぐに疼痛が軽減するケースは少ないと感じています。やはり、メカニカルストレスを減らしていくことがポイントにはなるように感じます。

パラテノン

もう一つの特徴としては、アキレス腱は”滑膜性腱鞘を有していない”ことです。

一般的に”腱鞘炎”と言われる手関節は滑膜性腱鞘を有しています。
アキレス腱はなく、代わりに”パラテノン”という疎性結合組織が覆っています。いわゆる筋膜の1種になります。

パラテノンの役割としては

滑走性・保護

などが挙げられます。

パラテノンは先述したように”筋膜”であり、下腿筋膜や足底まで展開しています。筋膜自体は筋肉や内臓、血管、神経などを覆っていて、組織間の滑走性やその場所を保持する役割があります。

機能

アキレス腱の機能としては大きく2つあり、外力により伸張して、元に戻る弾性を有しています。

エネルギーの貯蔵と放出
衝撃吸収

アキレス腱は人体における最大の腱組織であり、歩行時には約4倍、走行時には約8倍の負荷がかかります。負荷がかかりにくい歩行では損傷が少なく、ジャンプやランニングは負荷がかかるため損傷しやすくなります。

危険因子の部分でも説明しますが、股関節伸展筋力が低下している場合は、足関節底屈による代償が考えられます。特にジャンプの回数が多くなるスポーツのバレーボールやハンドボール選手などは注意した方がいいですね。

アキレス腱の周囲組織

アキレス腱の周囲組織を総称して、enthesis organと言ったりします。

これは…

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