
【なぜ?】股関節伸展制限があると、大臀筋の筋トレ効果が半減する理由
変形性股関節症患者で「股関節が硬い患者さん、多いですよね?」
臨床で、特に高齢者やデスクワーカーを担当していると、股関節の伸展制限に遭遇しない日はないかもしれません。そして、多くの場合、私たちは「股関節が硬いから、大臀筋の筋力も落ちているんだろう」と考え、スクワットやブリッジといった筋力トレーニングを処方します。
しかし、そのアプローチ、本当に根本的な解決に繋がっているでしょうか? もしかしたら、伸展制限という「根本原因」を見過ごしたまま、ただ闇雲に筋トレをさせているだけかもしれません。
臨床でこんな経験ありませんか?
「歩行が不安定だから、お尻を鍛えましょう」 「腰が痛いのは、お尻が使えていないからですよ」
そう説明して、患者さんに一生懸命ブリッジやスクワットを指導する。 でも、数週間経っても、なぜか歩容はあまり変わらない。 患者さん本人も、お尻に力が入っている感覚がイマイチつかめていない…。
良かれと思って処方した運動療法が、期待したほどの効果を生まない。 セラピストなら誰もが一度は経験する、もどかしい瞬間だと思います。
「筋力が弱いなら、鍛えればいい」
これは、一見すると正しいアプローチに思えます。 しかし、もし、その**筋トレの効果を半減させてしまう”根本的な原因”**を、私たちが見過ごしていたとしたら…?
実は、股関節の伸展制限がある患者さんに対して、いきなり大臀筋の筋力トレーニングを行うのは、【サイドブレーキを引いたまま、アクセルを踏み込む】 のと同じくらい、非効率的なアプローチなのかもしれません。
なぜなら、そこには**「相反神経抑制」**という、私たちの身体に備わった”神経のブレーキシステム”が大きく関わっているからです。
この神経的なブレーキがかかったままでは、いくら質の高い筋トレを指導しても、大臀筋は本来のパワーを発揮することができません。
この記事では、なぜ股関節伸展制限が大臀筋の筋力低下を引き起こすのか、その科学的根拠(エビデンス)を解剖学・運動学的に紐解き、「制限の改善」と「筋機能の再教育」を同時に行うための具体的なアプローチ戦略を解説していきます。「とりあえずの運動療法」から脱却したい先生は、ぜひ最後までお読みください。