頚部に重要な固有受容感覚

「動かすだけ」じゃ不十分!非特異的頸部痛リハビリの新常識、固有受容性エクササイズ

皆さん、首が痛い患者さん、特に非特異的頸部痛(NNP)の方って本当に多いですよね。臨床で、ただ可動域訓練(ROM訓練)だけをさせていませんか?それでなかなか改善しなかったり、すぐ症状がぶり返したりするケース、経験ありませんか?

なぜ、標準的な治療だけでは改善しきれないのか。その答えの鍵は、僕がいつもお話ししている「Joint by Joint theory」にあります 。頸椎は本来「可動性(モビリティ)」が求められる関節ですが、その土台である胸椎の動きが悪くなっていることが多いんです。その結果、頸椎が過剰に動きすぎて不安定になり、痛みにつながってしまう。

だから、問題は単純な「硬さ」だけじゃないんです。根本には、「感覚運動制御」、特に「固有受容覚」の機能障害、つまり「動きの質の低下」があります 。NNPの患者さんは、自分の首が今どこにあって、どう動いているのかを正確に感じ取る能力が低下しているんです 。

今回は、この「動きの質」にフォーカスした画期的な研究を基に、僕たちセラピストが「なぜこの運動療法を行うのか」をしっかり言語化し、明日からの臨床を変えるためのヒントをお伝えします!


研究のデザイン:従来のROM訓練 vs 固有受容性エクササイズ

Efficacy of a proprioceptive exercise program in patients with nonspecific neck pain: a randomized controlled trial - PubMed The proprioceptive exercise program may be considered as the pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この研究が素晴らしいのは、NNPに対する2つの異なる運動療法を、質の高い研究デザイン(RCT)で直接比較した点です。NNP患者42名を2つのグループに分け、10日間介入しました。

  • 頸部可動性群 (CMG): 温熱やマッサージといった基礎治療に加えて、伝統的な頸部のROM訓練(前後屈、側屈、回旋など)を実施しました 。

  • 固有受容性群 (PG): 同じ基礎治療に加えて、固有受容覚と頭頸部の協調性を高める訓練を行いました。こっちが今回の主役ですね。頭にレーザーポインターをつけて、壁のターゲットを追いかけたり、正確な位置に戻したりするエクササイズです 。

両群とも同じ基礎治療を受けているので、純粋に「運動療法の種類」による効果の違いがわかる、というわけです。


衝撃的な結果:固有受容性エクササイズの圧倒的優位性

この結果が本当に衝撃的で、僕たちの臨床に一石を投じる内容なんです。

1. 痛みと機能障害:患者さんが実感できるレベルで改善したのはPGのみ

痛み(VAS)と機能障害(NDI)は、両方のグループで改善しました。しかし、その改善の「質」が全く違ったんです。 固有受容性群(PG)の方が、改善度が有意に大きかっただけでなく、患者さんが「良くなった」と実感できる臨床的に意味のある改善(MCID)を達成したのは、PGのみでした 。

ROM訓練群(CMG)の改善は、統計的には変化があっても、患者さん本人からすれば「うーん、まあ少しは…」というレベルだった、ということです。

2. 客観的指標:ROM訓練でROMが改善しないという事実

この差を裏付けたのが、客観的な指標です。 圧痛の感じやすさ、頸部の可動域(ROM)、そして固有受容覚の指標である頭部再設定精度(HRA)の3項目全てで、有意な改善が見られたのは固有受容性群(PG)だけでした 。

特に驚くべきは、ROM訓練を行ったCMGでは、ROMに全く変化が見られなかった点です 。これ、どういうことかわかりますか?

NNPにおける可動域制限は、組織が物理的に硬いから動かない、というよりも、痛みや恐怖心からくる防御的な筋収縮や、不適切な運動制御パターン(モーターコントロールのエラー)が原因である可能性が高い、ということです。つまり、根本原因である感覚運動制御を改善しない限り、単純に「動かすだけ」では可動域は改善しないんです。むしろ、間違った動かし方を反復練習させて、負の運動学習を助長している可能性すらあります。

3. 鎮痛薬の使用量

介入後、PGでは80%の患者さんが鎮痛薬を減らせたのに対し、CMGでは77.3%の患者さんが同じ量の薬を使い続けていました 。この差は決定的ですよね。


臨床への応用:評価と治療のパラダイムシフト

この研究は、僕たちの臨床にめちゃくちゃ重要な示唆を与えてくれます。

評価の重点を「可動域」から「運動の質」へ

これからは、ただゴニオメーターで角度を測るだけじゃなく、「どのように動かしているか」というモーターコントロールの質を評価することが重要です。例えば、閉眼で頭を元の位置に戻せるか(HRA)、回旋するときに肩が一緒に上がってしまったり、顎が突き出てしまったりする代償運動はないか、といった視点ですね。

治療の第一選択肢としての固有受容性エクササイズ

特に慢性的なNNPには、いきなりストレッチやROM訓練から入るのではなく、固有受容覚と協調性を高めるエクササイズを初期から導入するべきです。レーザーポインターは安価で導入しやすいですし、患者さん自身が自分の動きを確認できる視覚的フィードバックとして非常に有効なツールになります。

モーターコントロールの注意点:「なぜ動かないのか?」の再考

可動域制限がある場合、短絡的に「硬いから伸ばそう」と考えるのはやめましょう。「なぜこの制限が起きているのか?」という臨床推論が何よりも重要です。その背景に、今回明らかになった感覚運動制御の障害が潜んでいる可能性を常に考えるべきです。正しい動き方を再学習させれば、防御的な筋収縮が解けて、結果的に可動域も改善してくる、というケースは本当に多いですよ。

もちろん、この研究も介入期間が短いなどの限界点はあります。しかし、「動きの量」よりも「動きの質」を重視するアプローチの優位性を示した価値は計り知れません。

そして、患者さんにはただエクササイズを処方するだけでなく、「今の首の痛みは、正しい頭の位置を脳が忘れてしまって、余計な筋肉が頑張りすぎているのが原因の一つです。なので、レーザーを使って正しい頭の位置や動き方を脳に思い出させる練習をしましょう。これが根本的な改善につながるんですよ」というように、しっかり言語化して伝えてあげてください。

この新しい知見を臨床に取り入れて、より多くの頸部痛患者さんを本当の意味での機能回復に導いていきましょう!

さらに詳しい運動療法の考え方や、具体的なエクササイズのバリエーション、臨床での悩みについて相談したい方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。あなたの臨床力をもう一段階引き上げるためのヒントが、きっと見つかります。

無料22大特典↓

LINE 友だち追加 utage-system.com