これだけは知ってほしい胸郭出口症候群

今回のテーマは「これだけは知ってほしい胸郭出口症候群-解剖学の理解を深める-」になります。
こちらの記事を最後まで読むと

・胸郭出口症候群の病態を把握できる
・主な絞扼部位を理解できる
・なぜ症状が出現するのかを理解できる
・患者に合わせた運動療法が展開できる

今回は「胸郭出口症候群」について共有していきます。

胸郭出口症候群と聞くと

「痺れがある…」
「なかなか症状が軽減しない…」

なんて思うセラピストも少ないと思います。というのは神経症状が出現しやすい疾患であり、長期間悩まされている患者もいるのが現状です。出現する症状によっては僧帽筋痛症といった肩こりからくるものと判断する方もいるかもしれません。

上肢の神経症状の中では頚椎の中枢に近い部分であるため、場合によっては手根管症候群の要因になることもあります。

胸郭出口症候群の知識を深めて運動療法が展開できるようになりましょう。

では始めていきます!


胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群(TOS)は胸郭上部から出る神経血管系の症状を引き起こす疾患を指します。鎖骨・肩甲骨周囲の環境や組織によって上肢症状が出現します。

胸郭出口というのはThoracic outletと言って、僧帽筋上部周囲の領域を示します。

頸部周囲には鎖骨下動脈・静脈、腋窩動脈・静脈、腕神経叢の神経と血管が存在しており、それらが何かしらの要因により圧迫や牽引ストレスを受けて症状が出現します。

一般的には3つに分類することができ、神経性TOSが最も多く、血管性TOSの割合が非常に少ないことがわかります。

血管よりも腕神経叢が圧迫や牽引ストレスを受けて痺れや疼痛が前腕などに出現してしまいます。

とは言っても血管・血流の問題を完全に取り除くことは難しいと考えています。というのは、神経の栄養血管にもなる血管が血流低下を起こすと神経症状のような痺れや疼痛を引き起こすことがあるためです。また神経と血管は並走しているため、全部神経の問題だと言えないと考えています。

主な分類

先ほどの分類の中で神経性TOSが最も多く、その中でも圧迫型・牽引型・混合型の3つの病態に分けることができます。

圧迫型は神経や血管を圧迫することにより症状が出現するタイプであり、腕神経叢の牽引により症状が出現するタイプを牽引型としています。

このようにタイプ別に分かれているということは、評価や運動療法でも病態に応じて展開していく必要があることを示しています。

圧迫型と牽引型

圧迫型と牽引型の病態をもう少し見ていきます。

胸郭出口症候群には徒手検査法があり、検査をすることでどこに要因が隠れているのかを判断することができます。

・Morleyテスト→斜角筋症候群の有無
・上肢下方牽引ストレス→牽引型TOS
・Adsonテスト→斜角筋症候群の有無
・Wrightテスト→肋鎖症候群の有無
・Edenテスト→肋鎖症候群の有無

圧迫型は神経や血管の圧迫症状があり、徒手検査により症状が誘発されます。牽引型は神経や血管に対して牽引ストレスがかかり、症状が誘発されます。

日常生活上で神経や血管が圧迫されることよりも、牽引ストレスを受けることが一般的に考えやすいと思います。例えば、買い物で重いものを持っていると上肢が牽引されて症状が誘発されることも考えられます。

絞扼されやすい部位

胸郭出口症候群は絞扼されやすい部位が3つあります。

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