今回のテーマは「鵞足の解剖と病態の理解を深める-鵞足炎のメカニズムとストレスの考え方-」になります。
こちらの記事を最後まで読むと

・鵞足を説明できる
・鵞足炎のメカニズム・ストレスを把握できる
・評価を臨床で実践できる
・理解して運動療法に応用できる

今回の記事は『鵞足』についてです。

鵞足は3つの筋肉より構成されていて、動的な膝関節内側支持機構の一つになります。そのため鵞足部へのストレスが過剰にかかることで鵞足部痛や炎症が生じることもしばしば経験します。

鵞足炎の疾患の方も経験しますが、意外と変形性膝関節症(膝OA)の患者でも経験します。

一般的に鵞足炎はオーバーユース症候群であり、いわゆる使いすぎ症候群の一つです。

ではなぜ鵞足炎が生じるのか?

なぜ膝OA患者に鵞足炎が生じるのか?

解剖学やメカニズムを理解して、少しずつ紐解いていきましょう!

では始めていきます!


鵞足とは

鵞足は脛骨近位内側にある部位であり、縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つの筋肉の停止部になります。膝関節内側にはMCLがあり、MCLは静的な膝関節安定機構であるのに対して、鵞足部は動的な膝関節安定機構になります。

停止部が鳥の足に似ていることから名前がついたそうですが、のちに後述する停止部にはバリエーションが豊富にあります。場合によっては鳥の足に似ていないような気もしますね。

薄筋や半腱様筋は前十字靭帯の修復に使用されることが非常に多いです。ではそれぞれの筋肉について共有していきますね!

薄筋

まずは薄筋ですが、股関節内転と下腿内旋作用がある筋肉になります。薄筋は触診がしやすい筋肉であり、大腿中央から遠位で触り分けしやすいです。

股関節内転筋群としては筋トルクは長い特徴がありますが、筋断面積を考慮すると筋発揮力は大きくないことが考えられます。股関節内転筋群では、大内転筋が最も大きい筋肉であり、それに伴い筋機能も重要になります。

薄筋は鵞足付着部により深層を形成している筋肉であります。

半腱様筋

半腱様筋は膝関節屈曲と下腿内旋作用がある筋肉になります。

筋線維長が長く、大きな収縮範囲を持つをされています。膝関節深屈曲位からの膝屈曲運動・ノルディックハムストリングexのような遠心性膝関節屈曲運動において、他の筋肉と比較して筋活動が高いことが報告されています。

縫工筋

縫工筋は股関節屈曲外旋と下腿内旋作用がある筋肉です。

縫工筋は鵞足付着部により表層を形成している筋肉であります。

停止部のバリエーション

最も一般的な鵞足部の停止は、縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つの筋肉が付着しますが、102例中54例と半分の割合しかありません。ということは他にも多くの停止部のバリエーションがあります。

次の多いパターンとしては、3つの筋肉と半腱様筋腱に付帯するバンドが付着するのが約30%くらいです。

鵞足滑液包

ここで鵞足を構成する筋肉以外にも滑液包についても理解しておきましょう。というのは、鵞足滑液包の炎症が生じることがあります。

膝関節の滑液包は主に付着部周囲に存在しており、摩擦が生じる部分に存在しています。筋腱との摩擦を軽減する役割があります。

鵞足炎のメカニズム

ではここからは鵞足炎を引き起こすとされているknee-in toe-outについてです。

縫工筋・薄筋・半腱様筋はそれぞれ下腿内旋作用がある筋肉であり、膝関節の動的安定化として活動します。knee-in toe-outにより膝関節内側部が伸張され、下腿外旋の強制で鵞足部に伸張ストレスが加わって疼痛が発生します。

knee-in toe-out

knee-in toe-outについてもう少し深ぼっていく必要があります。というのはACL損傷であったり、シンスプリント、扁平足などなど多くの疾患で関わってくる部分でもあり、考察が不十分であると治療アプローチがなかなかうまく展開できないことにつながってしまいます。

knee-in toe-outは名前の通りであり、膝関節外反・足部外転と指しています。これらの異常運動・異常動作が確認できる時は足関節からの上行性運動連鎖、股関節からの下行性運動連鎖も深く関わっています。

膝関節外反・足部外転に他の分節の内容を付け加えていくと…

股関節内旋
膝関節外反(knee in)
下腿外旋
足部外転
このような感じが臨床でも多いかと思います。

そのため股関節への治療アプローチが有効的な場合も多くあると考えていますし、反対に足関節への治療アプローチが有効的になる場合もあると思います。

ストレスの考え方

鵞足部のストレスの考え方を共有しておきましょう。

先ほどから話が出ている鵞足構成筋への伸張ストレスが疼痛を引き起こすメカニズムです。この辺りの理解は深まっていて、だからこそ伸張ストレスを加えて鵞足部の構成筋への評価を行っていると感じています。

ここでもう一つのメカニズムや考え方を一緒に入れて欲しいです。それは鵞足滑液包への圧迫ストレスです。圧迫ストレスが過剰に加わっていくと滑液包炎が起きて疼痛を発生させます。

これらのことを踏まえていくと
膝関節への動きを増やしていくと鵞足構成筋へのストレスが加わり続けて、鵞足部の炎症(構成筋の疼痛もしくは滑液包炎)が起きる可能性があります。

内側膝OAの鵞足

鵞足炎と変形性膝関節症との関連が報告されています。臨床の中でも膝OA患者で膝関節内側部・鵞足部の疼痛を訴える方も少なくないと感じています。

しかし内側型膝OAはknee-in toe-outではなくて、knee-out toe-inであることが一般的になります。

となると、鵞足部へのストレスが加わりにくいことがわかります。

なぜ内側膝OA患者は鵞足部の疼痛を感じるのか?

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