
はじめに
首こり、肩こり、首の詰まり感。こういう主訴を聞くと、つい頸部の筋緊張や可動域から見たくなります。もちろん頸椎のアライメント、椎間関節、後頭下筋群、斜角筋、胸鎖乳突筋あたりを確認するのは大事です。ただ、そこで止まると少しもったいない。
臨床では、首そのものより「腕を上げたときの肩甲骨」が原因の入口になっていることがあります。特に、挙上の初期から肩が耳に近づく、いわゆる首すくめが出るケースです。これは本人が力んでいるだけではなく、肩甲骨の上方回旋が足りないぶんを、僧帽筋上部や肩甲挙筋で埋めている可能性があります。
この記事では、頸部過緊張を「首だけの問題」と決めつけず、肩甲骨上方回旋、肩甲胸郭関節、肩甲上腕リズム、前鋸筋と僧帽筋の協調という視点から読み替えていきます。少し専門用語は使いますが、臨床でそのまま観察、説明、運動療法につなげやすい形で整理します。
肩甲骨挙上を見逃さない

まず見たいのは、肩関節屈曲や外転のときに、肩がどのタイミングで上がるかです。腕を上げ始めた瞬間から肩が耳へ近づくなら、肩甲骨が滑らかに上方回旋しているというより、頸肩部で持ち上げにいっている状態です。
ここで「肩の力を抜いてください」と言うだけだと、だいたい一瞬しか変わりません。なぜなら、本人にとってはその動き方が一番ラクな運動戦略になっているからです。肩甲骨下角が外上方へ動かない、肩峰がうまく逃げない、胸郭上で肩甲骨が滑らない。そうなると、腕を上げるための余地が足りず、首すくめで帳尻を合わせにいきます。
痛みより動きの癖
痛みの場所を聞くことは当然必要です。でも、痛みの場所だけで介入を決めると外しやすいです。首がつらいから首を揉む、肩上部が張るから僧帽筋上部を緩める。それで楽になる人もいますが、腕を上げるたびに同じ代償が出るなら、また戻ります。

見たいのは「どの動作で、どの筋が先に頑張るか」です。首主導で上げているのか、肩甲骨主導で上げているのか。僧帽筋上部が先に盛り上がるのか、下角が外上方へ回ってから上肢がついてくるのか。この違いを見るだけで、頸部局所の問題なのか、肩甲骨の運動制御の問題なのか、仮説がかなり絞れます。