
膝内側痛を「膝だけ」で見ない
膝の内側が痛い患者さんを評価するとき、多くの場合、まず意識が向くのは膝そのものです。内側半月板、内側側副靱帯、鵞足部、内側コンパートメントなど、痛みが出ている部位を確認することはもちろん重要です。

しかし、膝内側痛を「痛い場所」だけで判断すると、見落としやすい要素があります。それが足部です。
荷重位では、足部の崩れ方が脛骨の向きや床反力の受け方に影響します。つまり、痛みの出口は膝であっても、負荷の入口は足部にあるかもしれません。
足部を後回しにすると連鎖を取り逃す
膝内側痛の評価で避けたいのは、圧痛や筋力だけで原因を決めてしまうことです。局所評価は必要ですが、最初から膝だけに絞る
と、足部から上がる運動連鎖を見逃す可能性があります。

足部回内、脛骨内旋、膝の内側ストレスは、荷重位で同時に起こりやすい現象です。特に片脚立位、スクワット、階段昇降のように
体重がかかる動作では、足部の崩れが膝の軌道に影響しやすくなります。
そのため、膝内側痛を見るときは、膝局所に入る前に「足部、脛骨、膝が一つの単位としてどう動いているか」を確認する視点が必要です。
足部回内は悪者ではない
ここで誤解してはいけないのは、足部回内そのものが悪いわけではないということです。

足部回内は、歩行や立位で床反力を受け、衝撃を吸収するために必要な動きです。回内がまったく起こらなければ、荷重時の適応が難しくなります。

問題になるのは、必要以上に崩れる回内や、荷重後に戻れない回内です。たとえば、内側縦アーチが荷重で大きく低下し、後足部外反が強まり、それに伴って脛骨内旋が過剰になる。このような連鎖が起こると、膝は内側へ流れやすくなります。
つまり臨床で見るべきなのは、「回内しているかどうか」ではなく、「その回内が荷重課題に対して適切か」「膝内側痛と関係しているか」です。
静止アーチより、荷重で崩れる瞬間を見る

足部評価では、静止したアーチの高さだけで判断しないことが大切です。
座位や非荷重でアーチが低くても、痛みがない人はいます。反対に、静止立位ではきれいに見えても、片脚荷重やミニスクワットで一気に足部が崩れる人もいます。
膝内側痛との関係を見るなら、痛みが出る条件で評価する必要があります。階段で痛いなら階段に近い動作で、片脚荷重で痛いなら片脚立位や片脚スクワットで確認します。
その中で、足部回内、脛骨内旋、膝の内側偏位が同時に起こっているかを見ます。形ではなく、崩れる瞬間を見ることが重要です。
足部・脛骨・膝を一つのラインで捉える

足部回内が強くなると、後足部外反や内側縦アーチの低下が起こりやすくなります。そこに脛骨内旋が連動すると、膝は内側へ流れやすくなります。
その結果、膝内側組織には圧縮、牽引、剪断のストレスが集まりやすくなります。もちろん、膝内側痛の原因は足部だけではありません。股関節、骨盤、体幹、膝局所の組織状態も関与します。
ただ、足部から脛骨、膝へ上がるラインを一つの単位として見ると、評価が散らばりにくくなります。痛い場所と負荷の入口を分けて考えることで、介入の優先順位を整理しやすくなります。
足部を支えて再テストする
足部回内が膝内側痛に関与しているかどうかは、変化量で判断します。

方法はシンプルです。まず、痛みが出る動作を確認します。片脚立位、ミニスクワット、階段動作などで、膝内側痛、膝の軌道、荷重感を見ます。
次に、徒手でアーチや後足部を支えます。その状態で同じ動作を再テストします。
このとき、膝内側痛が軽くなる、knee-inが減る、荷重が安定する、動作がスムーズになるなどの変化があれば、足部回内と脛骨内旋が介入候補に上がります。
反対に、足部を支えても痛みや動作が変わらない場合は、膝局所、股関節、体幹など、別の要因に戻って評価します。
重要なのは、足部を見たかどうかではありません。足部を支えた状態で、同じ動作を再テストし、変化を確認することです。
足部支持で変わるなら、介入の入口になる

たとえば、階段や片脚立位で右膝内側痛が出るケースを考えます。荷重位で右足部の回内が強く、脛骨内旋とknee-inが目立つ。そこでアーチや後足部を徒手で支えると、痛みと膝の内側偏位が軽くなる。
このような反応があれば、足部支持は介入の入口になります。
ただし、短足筋や後脛骨筋だけを鍛えればよいという話ではありません。足部で支持を作りながら、脛骨の向き、膝の軌道、股関節外旋の制御までつなげて練習する必要があります。
足部を支えることで膝が変わるなら、その支持を自力で再現できるようにする。ここまで含めて、評価から介入へつなげることが大切です。
まとめ
膝内側痛の患者さんを見たら、一度だけ足部支持を入れて再テストしてみてください。
痛み、膝の軌道、荷重感のどれかが変われば、足部からの上行性連鎖が関与している可能性があります。変わらなければ、膝局所や股関節へ戻ればよいだけです。
評価の一手を増やすだけで、仮説の精度は上がります。
膝内側痛では、痛い場所だけで原因を決めないこと。足部回内、脛骨内旋、膝内側ストレスを同じ荷重条件で確認すること。そして、足部を支えて再テストすること。
この流れを入れるだけで、膝内側痛の見方はかなり変わります。